Pallet 第4話 色鮮やかな花々と

外は生憎の雨模様。昼食後のブレイクタイムを4人でのんびり過ごしていた。

「花に例えるなら・・・愛里は間違いなく『ひまわり』だね」
千夏の一声に歩も俺も大きく首を縦に振った。

「いつも明るく、天真爛漫」
「太陽のように周りの人達を優しい光で包み込んでくれる」
俺の言葉に続けて歩も口にすると、愛里は顔を赤くし、両手で頬を隠した。
「そこまで言われると、ちょっと恥ずかしい・・・」

「じゃあ、千夏は、『はなしょうぶ』かな。凛と優美に咲く感じが千夏みたいで・・・」
「愛里、もういいよ!これ凄く恥ずかしい」
千夏は愛里の口を両手で慌てて塞いだ。

「歩は『きんもくせい』だな。金木犀の下で読書してそう」
「例えるよりも、似合うだね。でも、確かに分かるかも」
俺と千夏の言葉を受け、歩も照れ笑いを浮かべていた。

「俺は何だろう。花の種類もあまり詳しくないし・・・」
「和弥は『ストック』かな。多色で綺麗な花なの」

そう言い、愛里はスマホから一枚の写真を見せてくれた。
レンガ造りの家の街並みと、花壇や窓辺に赤紫や黄、白など、様々な色のストックの花が咲き誇る風景だった。

「今、イタリアにいる両親が送ってくれた写真なの。今の時期が一番見頃なんだって」
「和弥はひまわりのように一つの茎に一つの花が咲くよりも、一つの茎に多くの花が咲く花の方が良いね」
愛里の千夏の言葉を受け、みんなが感じた気恥しさを俺も身をもって体験した。


それからは、花やイタリアの話に花を咲かせ、気付けば涼しい風が家の中に吹き込んでいた。
「よし、そろそろ動くかー」
「今日の料理担当は俺と愛里だったよな」
俺と愛里は台所へと向かい、歩と千夏も動き始めた。

今日の話しが俺の未来を変えるきっかけになると知るのは、少し先のこと。



Pallet 4話を読んで下さり、ありがとうございます!
花の話はずっと書きたかったのですが、なかなか書き進まずかなり苦戦しました。
愛里の向日葵はすぐに思い浮かぶけど、男性陣は(主に和弥)難しかったです。
和弥に関しては、日本で親しまれている花よりも、海外の品種の方が合うと思い、色は多色、小振りの花で一番和弥らしい花を探しました。

作品完成後、花言葉を何となく調べたら、
☆愛里の向日葵は、あなただけを見つめます/光輝

☆千夏の花菖蒲は、あなただけを信じています/優しい(優美な)心

☆歩の金木犀は、謙虚/真実の愛/初恋

☆和弥のストックは、愛の絆/見つめる未来/思いやり

と、私が思い描く登場人物のイメージに当てはまる部分が多く、
凄く良い作品が出来たと後々になって思いました(笑)
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Pallet 第3話 ハッピーハロウィン

10月31日はハロウィンの日。
そして俺、大野 歩の誕生日でもある。

今年は、愛里の家で4人でハロウィンパーティーを催す。
「じゃあ、愛里と歩で装飾の準備。私と和弥で料理の準備だね」

一週間前から計画を立て、準備してきた為、装飾はすぐに終わった。
愛里の提案でカボチャをくり貫き、人数分のグラタン皿を作り、中身でグラタン、シチュー、ケーキを作ってくれた。

テーブルには、赤とオレンジのチェック柄のクロスを敷き、料理を並べ、パーティーの準備は完了。
「それでは、ハロウィンの準備お疲れ様でした。そして、歩の誕生日を祝して、乾杯―!!」
愛里の音頭に合わせ、ハロウィンパーティー兼、俺の誕生日会が始まった。


食事な途中、和弥がふと席を立ち、無造作に置いてあった段ボールの中から3種類の袋を取り出し、席に戻ってきた。
「3人でプレゼントを用意したんだ」
嬉しさと気恥しさが交錯する中、愛里、和弥、千夏からプレゼントを手渡された。
「今、明けても良い?」

了承を得た上で、まずは愛里のプレゼントを開封した。
「歩は本が好きだから、ブックカバーを作ったの」
深緑と黄緑のチェック柄にウッドボタンで固定出来るよう細工がされたブックカバー。
しかも、小説サイズ、単行本サイズなど、数種類作ってくれた。
驚くことに、リバーシブルになっていて、裏面は濃い青と水色の色違い。

千夏からは、白い和紙とオレンジ色の折り紙でハロウィン仕様の切り絵を組み合わせたオリジナル栞(しおり)。
「愛里がカバーなら、私は栞かなって思って」
愛里ほど、綺麗に出来ないと千夏は言ったけど、俺からしたら店で買ったかのようなクオリティーだった。

和弥からは、俺が買おうと思ってた軽量ヘッドホン。
「ちょうど、壊れたって言ってたし、これ買うって言ってたの思い出して」
千夏や愛里のようにモノは作れないからと和弥は笑っていったが、『Happy Birthday』と書かれた手作りのメッセージカードがそっと添えられていた。

本当に、本当に幸せを共有出来る友を持ったと心から思う。
幸せな空間で最高の友と過ごす誕生日。
感謝しても、し尽くせないと思う。
本当に最高の友が側に居るから、俺も側に居たいと思える。
改めて実感したこの関係を、永遠のモノにしたい。
いや、しよう。

「本当に、皆ありがとう」



今回は歩メインの話でした。
さて、余談ですが、他の人の誕生日も同時に考えました!
橘 愛里→3月3日(雛祭り。春が似合うと思い)
大野 歩→10月31日(ハロウィン。読書の秋→秋のイベントはハロウィン)
三条 千夏→7月2日(早夏のイメージ。ちなつ→ち・な(7)・つ(2)・・・)
岩田 和弥→12月21日(残り物の冬。ほとんど意味は無いですorz )

10月中に投稿出来なくて、ちょっと悔しいですが、久しぶりに思うまま書けました(*^^*)
この調子で今後もいろいろ制作する予定です。

Pallet 第2話/夕暮れの影法師

Pallet第2話。今回は和弥の話です!
和弥の過去、悩み、葛藤などと、暗い話になってしまいました・・・。ごめんなさい。
ここから先は本編になります。


俺には母親の記憶があまり無い。9歳の時に、母親は事故で亡くなった。
雨上がりの、夕暮れ時の事故だった。
買い物を終え、自転車で帰宅していた母親と雨でスリップした軽自動車が衝突。
救急搬送されたが、母親の意識が戻ること無く、事故から三日後に息を引き取った。

不安と戸惑い、悲しみと後悔。
そんな負の感情で溢れる中、俺と父親は必死に模索しながら生活した。
父親は、俺を生かすため。
俺は、父親の負担を最小限にするため。
お互いがお互いを第一に考え、生活し続けた。


高校一年のある放課後、外部活をする生徒や帰宅をする生徒の足を惑わせるように、夕立が降った。
鞄から折り畳み傘を取り出し、帰宅に急ぐ生徒。
傘も無く、全力疾走で自転車を漕ぐ生徒。
雨が弱まるまで校舎内で待つ生徒。
部活を一時中断して、雨宿りする生徒。俺もその一人だ。

そんな中、その様子を美術室で描いている生徒がいた。
同学年で美術部員の橘 愛里。
忙しなく鉛筆を走らせ、一瞬の情景をスケッチブックに収めていく。
目が離せなかった。
雨音が弱まっていくのにも気付かず、彼女の事を見ていた。

あの日の事は今でも鮮明に覚えている。
ただ、一つ気になるのは、愛里がどんな絵を描いていたかだ。

月日が過ぎ、高校三年の夏、愛里の家で生活し始めた頃。
ダイビングショップから帰宅しようとしていた俺の足を夕立が阻んだ。
「俺、雨男かな・・・」
そんな事を言いながらも、頭の片隅で母親の事を思い出していた。
幼い俺は雨上がりの空が好きだったらしく、雨が止むと外に出て、母親と一緒に空を見上げていたらしい。
あの日の事故が無ければ、今でも雨上がりの空が好きだったかも知れない。

ダイビングショップで傘を借り、俯きながら歩みを進めた。
雨の音が、俺の気持ちを沈ませる。

「お帰り、和弥」
聞き慣れた声に、俺はゆっくりと顔を上げた。
目の前に立っていたのは千夏だった。
「傘、持って行かなかったと思って、迎えに行こうと・・・」
「良かった・・・」
ふとこぼれた言葉に釣られて、俺は涙を流していた。
「えっ、ちょっと、どうしたの!?何所か怪我した?気分悪い?」
千夏は慌てて近付き、俺の体を心配する。
着ていた上着の袖で俺の涙を拭う千夏をそっと抱き寄せた。
「・・・ごめん、母親の事、考えてて」

「苦しかったね。もう、大丈夫。私が・・・、皆がいるよ」
千夏の細い腕が俺の頭を抱え、泣く子をあやすように髪を撫でる。
不思議と涙が止まり、荒れていた心が落ち着きを取り戻し始めた。

通り雨だったのか、数分で雨は止んだ。
「雨も止んだみたいだし、帰ろう」
差し出された千夏の手を取り、再び歩みを進めた。


愛里の家に着いたが、愛里の姿は無かった。
テーブルの上にスケッチブックが数冊、無造作に置かれてある。
「まったく、あの子は・・・」
腰に手を添えたまま、千夏は裏庭の窓を開けた。
そこには、スケッチブックと水彩絵の具を持ち、制作真っ最中の愛里がいた。
「お帰りー。ちょっと待っててね、すぐに終わるからー」
家や電線など、障害物がほとんど無い見晴らしの良い裏庭は、愛里のお気に入りスポットでもある。

赤紫色の夕立後の夕暮れ空。
千夏と俺も裏庭に出て、愛里の後ろで作品の完成を待っていた。
黙々と描き続ける愛里の姿に俺は食い入るように見ていた。
まるで、高校一年の時のように・・・。
そして、自然と空を見上げている俺がいた。
久しぶりに雨上がりの空を見た気がする。
何の躊躇の無く、何の感情も無く、ただ無意識に見上げていた。

大まかに描き終え、満足したのか、愛里はくるりと俺達の方を向いた。
「お腹空いたね。晩ご飯にしようか」

愛里はスケッチブックを俺に預け、手際良く水彩道具を片付け始めた。
千夏はキッチンに向かい、晩御飯の支度を始めた。

「愛里、見たい絵があるんだけど・・・」
「ん?」
ずっと気になっていた放課後の絵。
俺の記憶違いでなければ、描いていたのは愛里だったはずだ。

俺の記憶の情景を話すと、愛里はテーブルの上に置いてあった一冊のスケッチブックを手に取った。
パラパラと捲り、笑顔でそのスケッチブックを見せてくれた。
そこに描かれていたのは、制服姿や部活動のユニフォーム姿の生徒が行き交う様子を描いた水彩画だった。
ただ、あの時は曇天だったはずだが、
愛里の絵は、お天気雨のように明るい青と白で所々をぼかし、雨など降っていないようにも見える。

「私ね、あの時の事、今でもしっかり覚えてるの。雨が降っていたけど、みんな良い表情で生き生きしてた。
だから、曇り空が似合わなくて、青い空の下で、白で少し霞ませて、空想感を出したら素敵かな、って思ったの」

モノの捉え方一つでここまで変わるのか・・・。
俺は、愛里のように感性豊かでは無い。
千夏のように、明るく、優しく、人を心から包む事は出来ない。
歩のように、器用に、場を見て行動出来ない。
悲観的かもしれないが、俺は、俺の良さをあまり考えないで生きて来た。
母親が亡くなってから、生きる事だけに必死で、悲しみや苦しみを押し殺して来た。

「和弥はさ、深く考え過ぎだと思うよ」
キッチンで晩ご飯の支度をしている千夏が、俺の心を読んだかのように、ふと口を開いた。
「もっと言って良いよ。もっと頼って良いよ。もっと、弱い所を見せてよ。全て受け止めるから」
「そうだよ!私達に言い難いなら、歩だっているんだよ。一人で抱えていたも辛いだけだよ」
千夏と愛里の言葉が一つ一つが、俺の心に流れ込む。

図星を指され過ぎて、正直驚くしかなかった。
「そうだよな・・・。あの時みたく、伝えてみないと分からないよな」

ふと、千夏に告白した時の事が頭に浮かんだ。
あの時だってそうだ。
あの時、告白していなかったら、俺はここに居ない。

「ありがとう、二人とも。何か、ごめん」
俺は愛里と千夏に頭を下げた。
ここで、切り替えないと、また引きずる気がした。
頭を上げたら、自分に、今に目を向けよう。
ゆっくりと頭を上げると、愛里が笑顔で両手をポンと合わせた。
「よし、これで終わり!!」
千夏も完成した料理をカウンターに置き始めた。

「ただいまー」
「おかえり、歩ー」
「おかえり、ちょうど料理出来たよ」

俺は、ここに居れて良かった。
俺には無いモノを持った人が、側に居てくれるから。
俺よりも、愛里や千夏、歩の方が俺の事を知っているかもしれない・・・。

雨上がりの夕空が俺の心をようやく明るくした。



最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
ここで一言言わせて下さい。
『和弥は雨男です!!』
過去の作品【愛の色】を読んで頂くと分かります。

和弥の当初の設定は、愛里並みに明るい、ムードメーカーの設定でしたが、
それだと、千夏と合わないと思い、180度視点を変えました。
歩をもっと出してあげたかったのですが、次回にします。

Pallet 第1話/はじまりの言葉

Pallet(パレット)シリーズ始動!!
このシリーズは、【Last White】【愛の色】の続編となります。
過去、この作品を読んで下さった方は、このまま読み進んで下さい。
【Last White】ならびに【愛の色】をまだ読んだことの無い方は、先にLast White、その後に、愛の色を
読んだ上で、
【はじまりの言葉】を読むことをお勧めします。
前置きが長くなりましたが、ここから先は本編となります・・・




きっかけは、愛里の一言だった。
「私の家で、シェアハウスしない?」
高校3年の夏、愛里の一言から、この物語は始まった。

愛里の両親が仕事で家を空ける為、両親からの了承を得た上で、シェアハウスをすることになったのだ。
基本的に出入りは自由。家事や買い物は愛里を中心に分担。
男女4人、一つ屋根の下での生活がここに始まります。



高校3年の夏ということは、大学受験や就職活動の時期。
愛里と私(千夏)は、同じ大学で同じ学科を希望。歩は、文系の大学を希望。
和弥は、趣味でやっていたフリーダイビングのインストラクターの資格を取得する為に、ダイビング施設でアルバイト中。


「あー、入試終わって、結果待ちのこの時間が嫌い・・・」
「身構えてても、疲れるだけだよ。それに、チョコ溶けちゃうよ」
私と愛里は試験を終え、今は数日後に郵送される合否結果を待つ状態だ。

チョコレート菓子を口にポンと入れ、難しい顔をしている愛里。
その姿を見るだけの私。


「・・・よし、サイクリングがてら海に行こう!」
「・・・はい?」
連日35℃以上を越える猛暑日かつ炎天下の中に行こうというのか・・・。
でも、家の中で緊張しながら結果を待つよりは、気分転換がてら外にいた方が健康的か。


時刻は14時を回り、最も暑い時間帯。
愛里の家から自転車で15分程の所にある海岸にやってきた。
夏休み期間の為、海水浴客が多く訪れ、賑わっていた。
「和弥も歩も、18時頃には帰れるって」
「了解。連日暑いから、晩ご飯はスタミナ料理にしようか!」


高校生活最後の夏休み。
私にとっては、これまでにない最高の夏休み!!



数日後、私と愛里の合格通知が届いた。
結果は両者とも合格。

月日は流れ、季節は秋。
歩も第一志望の大学に無事合格。
和弥は、見習いインストラクターとして、日々研修中。
既に経験者の為、『日々復習』と和弥は笑顔で話してくれている。


そして、季節は冬。
卒業式当日。
式を無事に終え、教室で担任と最後のホームルーム。
『3年生は、あっという間だ』と春に言われた私達。
2年生から担任もクラスメイトも変わらない。
2年間の思い出で担任が語ってくれた。
私達はただただ聞き、いつしか担任も生徒も涙を浮かべた。

『最高の生徒達に囲まれて、最高の卒業式を迎えられた。幸せな毎日だった。ありがとう』

頭を下げた担任に、私達は泣きながら拍手をし続けた。
このクラスも今日で終わり。
頭では誰しもが解っている。
でも、何でだろう。
また、ここに来てしまいそうな居心地の良さは・・・。
離れ難い、この空間は・・・。

後ろ髪を引かれながらも、私達は教室を出て、それぞれの未来へと歩み始めた。


愛里と一度別れ、それぞれ自宅に戻った。
翌日、私は再度愛里の家に入った。
『ただいま』
初めて言った言葉に、少し気恥ずかしくなる。

その言葉に愛里は微笑み『おかえり』
と応えてくれた。


真っ白なキャンパスにそれぞれの色で描いていく、これからの未来。
楽しみな、私達の未来。

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朱き桜 第4話 月葉と簪

【麗、月葉、朱桜
蒼の記録書後の話】



朱桜との夜稽古を終え、私は湯浴みを済ませ、月葉の部屋を訪れた。

「月葉、少し良い?」

私は知らない月葉の過去。
それが、蒼の記録書に書いてあった。
月葉が御母様の守人に就いた時のことは記録されてあったが、それ以前のことは、あまり書かれては無く、聞いたことも無い。

「はい。どうぞ」


戸を開けた私は、目を疑った。
「えっ、と・・・」

そこには、男装姿をし、髪を上で一本に束ねた月葉が居た。

「この姿では初めてでしたね。すいません、驚かせてしまって」
スッと立ち上がり、月葉が私の前に来た。

何でだろう、月葉だと分かっているのに、ドキドキする。


「麗様、どうされたのですか?」
「あっ、その・・・。月葉の、昔の話を聞いてみたくて・・・」

今更だけど、こんなこと聞いたら失礼かも・・・。
もし、話したくないことだったら・・・。

「では、中へどうぞ。今、茶を煎れますね」


私は部屋に入ってからも、まだ緊張していた。
「温かいうちにどうぞ」
「ありがとう」

でも、茶を飲んだら、だいぶ心が落ち着いた。


「本題に入りますね。私は昔、日向様の守人に就く前は、花街に居ました。と言っても、芸者ではなく、芸者達を護る仕事をしていました」

「芸者を護る?守人ではなく?」

「契約を交わした者と、その周囲の者を護る。それが守人です。花街では、問題や騒動を回避し、芸者や御客様が円満で居られる場を作り、維持する役割をしていました。契約があるか、護るモノの対象が人の命や人生か、人々の生活空間か、などの違いですかね」

「何か、難しいね」


昔の話に花を咲かせている中、ずっと気になっていたことを聞いてみた。

「その服装も、花街の時に?」
「はい。この姿で・・・」

急に月葉が身を寄せ、帯に挿していた一本の簪で、私の髪を結い始めた。

「えっ、月葉。ちょっと!?」

驚きの余り、後退りする私の体に、月葉は軽く手を添え支えた。
まるで抱き締めるかのような密着度に、私は再度緊張した。

「うん。とても綺麗です、姫様」

結い終わり、髪をサラリと撫で下ろす月葉は、とても紳士的に見えた。

「なっ、なんか、すごく恥ずかしい・・・」


その後も、話は尽きること無く続き、私はいつの間にか月葉の部屋で眠ってしまった。


「このまま寝かせてあげてね、朱桜」
「ああ。今から出掛けるのか?」
「少し花街の太夫に会いに行くだけ。それにしても、ずっと部屋の前に居るとは思わなかったわ」
「麗が部屋に居なかったから、探させてもらった」
「朱桜も、今日は中で休みなさい。麗様の為にも」


私の知らない月葉の過去と、初めて見た、もう一つの月葉。
それは、とても複雑で、
でも、優美で、紳士的で、
少し不思議な感覚だった。
プロフィール

結羽

Author:結羽
結羽=マイペースな自由人

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