そのままの君で 

ずっと君を見ていたい。笑顔の似合う君を。
でも、何か悲しい事があった時は、あの日の言葉を思い出して・・・
俺はいつでも側にいるから。


○始まりの日

ジィリリリ…!!

目覚まし時計がけたたましく鳴った。
その音に気付き、俺は欠伸をしながら目覚まし時計を止めた。


俺は雨宮 香介(キョウスケ)
秋菊高校の1年生。

「香介、翔くんが来たわよ」
「あぁ、今行く」

まだ着慣れない制服を着て家を出た。
学校へは歩いて行ける距離にある。

「じゃ、また後で!」
「あぁ」

俺と翔はクラスが違う。
教室へ行こうとした時、1人の女子が走って来た。
「おはよう、香介!」
「柚奈、お前、抱き着くなぁ!!」

こいつは俺と同じクラスの木之本 柚奈。
見ての通り、周りを気にせずにすぐに行動する元気で明るく騒がしい奴だ。

「柚奈、早く離せ。動けない・・・」
「そうね。早く教室に行かないと遅刻になっちゃう(笑)」



放課後

「ねぇ、これから部活見学に行かない?」
「俺、翔と行く約束してるけれど・・・」
「うん、知ってる。翔からはOKもらってるよ」
「しっかりしてるなぁ」

「香介、柚奈。どこから行く?」
「わぁ!!」
「きゃ!!」
物音立てずに翔が近付いて来ていた。
「もぉ、脅かさないでよ!!」
「ハハハー。わりぃーわりぃー」


空馬(クウマ) 翔
こいつとは幼稚園からの幼なじみで家も隣。
中学校ではサッカー部のキャプテンをやっていた頼りになる奴だ。

「まぁ、柚奈が香介と同じクラスで良かったぜ。さぁ、部活を見に行きますか!Let’s Go!!」

廊下を走り、3人は部活を見に行った。
いくつか見て、最後に翔の要望でサッカー部を見に行くことにした。
「柚奈、お前は行きたい所とかないのか?」
「んー、あるけど、明日行くから良いよ。香介は?」
「俺も、明日で良いや。今日はこいつのワガママに付き合う」


俺らはグラウンドへ行き、サッカー部の方へと歩いて行った。
「おぉ!カッコイイ!!」

「変な雲が出てきた。雨降るかもなぁ・・・」
「うそぉ。私、傘持って来てないよ」
「雨降る前に帰るか。ちょっと待ってろ」
俺は柚奈から離れ、翔の元へと行った。
でも、急に嫌な感じがした。


「危ない!!」
野球部が打った強い打球が柚奈の方に近付いて行く。
「柚奈!!」
俺は無我夢中で柚奈をかばった。

ボールは俺の頭に当たり、俺は気を失った。

「香・・・介?香介!!」
「おい、香介!しっかりしろ!!」

柚奈と翔の声が校庭に響き渡り、辺りは一気に騒然とした。

「誰か保健の先生を!」
「職員室にも伝えてくれ。大至急に!」
野球部とサッカー部の部長がすぐに冷静な判断をしてくれた。


「あっ、雨・・・」
予想通り、雨が降ってきた。
俺の頭から血が流れ出てくる・・・。

「まずいな。屋根のある所へ行きたいが、下手に動かすと・・・」
「綺麗な布で頭の血を止めよう。俺らに出来る応急処置はそれしかない」

雨は容赦なく振り続ける。
雨と出血のせいで俺の体も冷え始めた。

「先輩、先生を呼んで来ました」
保健の先生が応急処置の道具を持ってすぐに駆け付けてくれた。
「今から救急車が来るから、野球部は校門前を開けて、救急隊の誘導を。サッカー部は保温用シートを部室から出しておいて。何人かは私の補助をお願い」
『はい!』
一斉に生徒が動き出した。

「先生、俺達は?」
「あなた達は雨宮くんを部室棟へ運ぶのを手伝ってくれる?」
「はい」

私は責任を感じた。
香介と一緒に翔の所へ行っていれば、こんな事にはならなかったのに・・・。
「柚奈、平気か?」
「うん。大丈夫・・・」
私は翔の手をとり、立ち上がった。
先生の応急処置も終わり、残りのサッカー部と一緒に屋根のある部室棟へと香介を運んだ。


数分後、救急車が学校に停まり、野球部の部長と救急隊が香介の元へと駆け付けた。
救急隊の対応が早く、香介はすぐに救急車へと運ばれた。
「わかりますか?」と言う救急隊の呼び掛けに香介からの反応は無く、体は冷え、ぐったりしていた。


その後、香介を乗せた救急車は学校を後にした。




○止まる流れ

誰かに呼び止められた気がした。
「来ちゃダメだ」と。
若い男の子の声で・・・。

目が覚めると俺の隣に男の子が座っていた。
「起きた?」
「・・・ここは?」
重い体を起こし、問いかけた。
「ここは君がまだ来ちゃいけない所」
「まだ?・・・と言うか、お前は誰だ?」

男の子はしっかりと俺の顔を見て答えた。
「俺は、香介。雨宮香介だよ」
「はぁ!?俺!?どういう事だよ」

どういう事か、その子は間違いなく子供の時の俺だった。

「そう言えば、やらなきゃいけない事はやったの?」
「何のことだよ・・・」
思い出せない。
こいつと会った事はあるが、何を話したかは覚えてない・・・。
「そう・・・、まぁ良いや。まだ待っているからさ」


遠くから声が聞こえてきた。
「起きて」と言う声が・・・
俺はその声に誘われていった。
温かい声の方へ・・・




○それぞれの思い

あれからどのくらい経っただろう。

「香介・・・香介・・・」
柚奈は俺の手を握り、ずっと名前を呼び続けた。
「こいつ、何日寝るつもりだよ!あれからもう3日だぞ」
「まだ3日じゃない!大丈夫、香介はすぐに起きてくれる」
その時、俺は無意識に指を動かした。

「香介?香介!?」
「どうした、柚奈」
「今、香介に手が動いたような・・・」
「マジかよ!!」
翔はすぐに柚奈の隣に行った。
「香介、わかる?」
「香介」

2人の声が届き、俺は意識を取り戻し、ゆっくりと目を開けた。

「柚奈・・・翔・・・」
「良かった。香介・・・」
そう言い、柚奈は泣きだした。
「おい、泣かすなよ(笑)」
「ごめん、柚奈」
「ごめんじゃないよ」
さらに泣かせてしまった・・・。

翔は居づらくなったのか、病院の先生を呼びに病室を出た。


「柚奈、本当にごめん」

柚奈は立ち上がり、下を向いたまま首を横に振った。
「ありがとう・・・」
「え?」

「だから、生きて帰ってきてくれて、ありがとう」
少し不機嫌そうに泣きながら言った。

俺は体を起こし、柚奈の手を取って、しっかりと『ただいま』と言った。
少し沈黙の後、柚奈が顔を上げて言った。
「香介、私・・・。私、香介に言いたい事が・・・」
「おーい、先生呼んで来たぞー」

病室内がまた沈黙に包まれた。
(なんでアイツは大事な時に・・・)

「じゃあ私達は屋上にいるね」
「また後でな、香介」
「ああ・・・」

病室には緊迫した空気が漂った。
「雨宮くん、どこか違和感などはありますか?」
手足はしっかり動く、ボールが当たった頭もそこまで痛くはない・・・。
「いいえ、特にありません」
「そうですか、それは良かった」

その後も軽い検査をしたが、特に異常はなく、後遺症なども見当たらなかった。

「これなら明日には退院出来ますよ」
「普通に動いても大丈夫ですか?」
「激しい運動さえしなければ大丈夫ですよ。でも、少しでも痛みや違和感を感じたら、すぐに病院に来て下さいね」
「はい。ありがとうございます」



先生から屋上へ行く許可をもらい、俺は2人の待つ屋上へと行った。
屋上の扉を開け、何か話し合っている2人の元へと足を進めた。

「柚奈、翔、お待たせ」
俺は2人に明日には退院出来る事を話した。
「じゃあ、明日にしようぜ。なぁ柚奈」
「そうだね」
「何の話だよ」
「明日の朝8時30に学校の屋上に来て。そうすれば分かるから」
「・・・分かった」

面会時間が終わり、2人は家へ帰って行った。




○過去の記憶

最近、よく夢を見る。
でも、しっかりと覚えてはいない。
分かっている事は、思い出したくはない過去の記憶だということ。
受け止めなければならない記憶だということ・・・。

朝になり、病院を無事に退院した俺は、一度家に帰ってから学校の屋上へと行った。



「こんなに楽しい日々はいつまで続くのかなぁ?」
「いつまでだろうな。だが、そのいつかは必ず来る。それよりも、俺は、今を楽しんだ方が良いと思う。そうは思わないか?柚奈」
「そうだよね。今を楽しまないと、あとで後悔しそう」
「そうそう」

屋上で2人が話をしている事を知らない俺は何も考えずに屋上の扉を開けた。
「・・・、翔?」
「よっ、香介」
「おはよう、香介」
「おはよう。ごめん、待たせて」

約束の時間よりも前に来ていた翔に俺は驚きを隠せなかった。
「どうした、翔。お前が約束の時間よりも早く来てるなんて」
「まあ、たまには良いだろ」
「そうだな(笑)」


風はちょうどよく吹いていて、雲1つ無い晴天の下・・・。
「ねぇ、こんなにも天気が良いから『陽灯神社』に行かない?」
「おっ、良いな!あそこは暖かいからなぁ」
「何だよそれ。ここまで来た意味ねぇーじゃん!」
「反論者なし!さぁ、行こう♪」
「人の話聞けよ!!」



陽灯神社は、高校の隣にある古い神社。
日の光、月の光が神社中に降り注ぐとても神秘的な神社である。

「やっぱりココは良い所だよね」
「そうだよな。学校の隣だし、部活をサボるには良い所だろうなぁ」
「サボるなよ・・・。そう言えば、2人とも何部に入ったんだ?」
俺達の高校は何かしらの部活に入っていなければいけない。
「俺は、サッカー部。当たり前だろう!」
「私は、演劇部。中学には無かったし、やってみたかったんだ♪」
2人の事を少し羨ましく思った。
少し休んでいただけで俺だけ置いて行かれたみたいに思えた。
「香介は何部に入りたいの?」
「俺は・・・。俺は、写真部かなぁ?写真撮るのは好きだし」
「良いんじゃねぇのか。普段はあまり活動してないし、自由らしいし。部活掛け持ちしたりして」

学校の話だけでかなりの時間は経った。
柚奈が持って来てくれた弁当を食べながら、話題は俺の過去の話になった。
「まだ、思い出せねぇのか?」
「ああ。でも、最近、よく昔の夢を見る気がして・・・。覚えてないんだけど。そんな気がする」
「病室にいた時も?」
柚奈の問い掛けに、俺はゆっくりと1回うなずいた。

空気が重くなってしまった。
俺が話題を変えようとした時、雨が降ってきた。
「うわぁ、マジかよ!朝は超良い天気だったのに」
「今日は帰ろう。また来週の月曜日に学校で話そう」
「そうだな」
3人とも立ち上がり、階段を下り、家へと帰って行った。


俺は家に着くとすぐに自分の部屋へと行った。
「はぁー、疲れた」
(病院の先生から激しい運動は控えるように言われていたけど・・・。これくらい大丈夫だよな)
ベッドに横になった時、柚奈から電話が掛かってきた。




○あの日の約束

「香介、雨、大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫。柚奈も大丈夫だったか?」
「うん、大丈夫。あのさ、明日晴れたら陽灯神社に行かない?」
「ああ、良いよ。」
「じゃあ、明日の午後1時に神社の最上で」
「ああ。分かった」

そう言って電話が終わった。


その日の夜、俺はまた夢を見た。
でも、普段の夢とは違った。
幼い時の俺と会い、俺に『記憶を返す』と言ってきたのだ。
「今までの記憶を全てお前に返す。でも、俺とお前がこの夢の中で会うのはこれで最後だ」
「急に何だよ。・・・っていうか、ずっと思い出せなかったのはお前のせいかよ!!」
「ああ。でも、お前も見るのを怖がっていた。だから、見せたくなかった。でも、状況が変わってしまった・・・。もう、時間が無い・・・」
「どういうことだよ・・・」
「すぐに分かる。だから、今のうちに記憶を返しておく」
「ちょっと待てよ!」
「じゃあな、香介。やる事やって、胸張って帰って来いよ・・・」

一方的に話が進み、気が付くと朝になっていた。
「何だよ、あいつ」
晴れたので俺は陽灯神社に行く準備をした。


1時前に陽灯神社の最上に着いた。
「珍しいなぁ、柚奈が遅れるなんて」
そう思いながら俺は石段に座った。

風は優しく吹いていてとても良い天気。
目を閉じ、耳を澄まし、風の音を聞いていると石段を駆け上がる音が聞こえてきた。
目を開けると目の前に柚奈の姿があった。
「ごめんね。ちょっと、家の用が終わらなくて・・・。急いで来たけど、遅れちゃった」
「大丈夫だよ、柚奈。座れよ、疲れただろ」
「うん、ありがとう」


俺は今日見た夢の事を全部柚奈に話した。
柚奈は、嬉しいような、悲しいような顔をした。
「じゃあ、中学の時の約束も思い出した?」
「ああ、ちゃんと思い出したよ。『ずっと一緒に笑顔でいること』だろ」
「うん。私も翔もずっとそう願ってる」
「えっ、翔も!!あいつも同じ事を言ったのかよ」
「うん。そうだよ」
「あいつがなぁ・・・」
あいつがそんな事を思っているとは思ってもみなかった。

「私は今でもそう思っているからね。今も、これからも・・・」
「ああ、俺もそう思ってる。ずっと3人で、最後まで・・・」
柚奈が少し泣きそうな顔をしていた。
「柚奈、言ったそばから笑顔じゃないぞ」
「あっ、あはは。ごめんね」
その時はまだ気付かなかった。
この先に待っている運命を・・・。

「私ね、香介に手紙を書いたの」
そう言い、柚奈は手紙をくれた。
「この手紙は家に帰ったら読んでね。それまで読んじゃダメ!良い?」
「あぁ、分かった。・・・ありがとう」
少し、恥ずかしかった。

「ねぇ、話が変わるけど・・・。香介は『神様』って信じる?」
「急に変ったなぁ。でも、少しは信じるかな?良い事があった時とかは『あぁ、神様が』って思うし・・・。でも、どうして?」
「ちょっと聞いてみたくて。最近、神様にお願いしてるの、『ずっと笑顔でいれますように』って」

俺は柚奈の言葉を聞いて立ち上がり、境内の方を向き、両手を合わせて静かに願った。
その間、聞こえてくるのは優しく吹く風の音だけ。

「これで良し!」
そう言い、また石段に座り直した。

「何をお願いしたの?」
俺は笑いながら「秘密」と誤魔化した。
柚奈も「何それ」と言いながら笑っていた。

「じゃあ、明日になったら教えてやるよ。それで良いだろ」
「・・・良いけど、なんで明日なの?」
「おいおい、明日は「柚奈の誕生日」だろ!」
「あっ、そうか!忘れてた」
柚奈は下を向き、目を閉じた。

「柚奈、何か欲しいモノはあるか?」
再び顔を上げ、真剣に考えていた。
「んー。じゃあ、自然のモノ!自然のモノなら何でも良いよ♪」
「OK!明日まで楽しみに待ってろよ」
「うん!楽しみにしてるね」

辺りがだいぶ暗くなってきた。
「そろそろ帰るか」
「うん、そうだね。じゃあ、また明日」
2人とも立ち上がり、それぞれの道へと進んで行った。『また明日』そう言い残して・・・。




○最後の思い出

柚奈へのプレゼントを作り終えた俺は、昼間に柚奈から貰った手紙を手に取った。
「柚奈から手紙を貰うなんて初めてだなぁ。何が書いてあるんだろう・・・」

封筒の中に手紙は2枚入っていた。
何が書いてあるのか予想もつかない手紙を俺は読み始めた。

1枚目の手紙には、『今まで本当に楽しかったよ。だからこれからもずっとよろしくね♪』と言うような感謝の言葉が書かれているだけだった。

2枚目は手紙でよくある追伸(PS)だった。
『私ね・・・・・』

俺の手から手紙が落ちていった。
「嘘、だろ・・・」



翌朝までしっかりと寝る事が出来なかった。
柚奈から貰った2枚目の手紙の内容が頭から離れなかったから・・・。

『家の都合で少し、引っ越す事になったの。急にこんな事を書いてごめんなさい。あとは明日話そう。本当にごめんなさい。そして、今まで本当にありがとう』


静かな部屋に急にメールの受信音が流れた。
メールは翔からだった。
『ときわ山に行くぞ。早く準備しろ!』
メールが届いてすぐに翔が俺の家に来た。
「おい、翔。家が隣ならメールしなくても良いだろう」
「まぁ、そうだけど・・・。それより、早く着替えて行くぞ!柚奈のプレゼントも忘れるなよ」
翔が妙に急いでいた。



ときわ山、昔から3人でよく遊びに来ている小さな山。
春は花見に、夏はバーベキューに、秋は紅葉が綺麗で、冬には雪合戦に、1年を通してこの山にはいろんな思い出が詰まっている。
そんな大切な場所で俺と翔は柚奈の到着を待っていた。
桜の花びらが風に乗って舞っていく。

「相変わらず、ここの桜は綺麗だなぁ」
「今年はいつもより少し遅くなったから、そろそろ散り始める頃だな」
「満開の頃に来た事ってあまり無かったような・・・」
「そうだな。去年は柚奈が風邪をひいて、2人で写真を撮ってやったっけ」
「3人で見るのは久しぶりだな」
「だが、それも来年からはしばらく2人でだな」

俺は、何も言えなかった。

ときわ山に着いた時、翔に記憶の事を全て打ち明けた。
翔は俺の話を聞いて苦しそうな顔を俺に見せた。
でも、翔は分かっていたのかもしれない。
俺には、もう時間が無いと・・・。
だから今朝、あんなにも急いでいたのかもしれない。


「香介、翔、ごめんね、待たせちゃって」
「大丈夫だよ、柚奈」
「俺達も少し前に着いたばかりだから。それよりも・・・」
『柚奈、誕生日おめでとう!!』

その一言を聞き、柚奈は少しホッとした表情を見せた。
「ありがとう、2人とも」

俺と翔はお互いが作ったプレゼントを柚奈に手渡した。
翔は、本を読むのが大好きな柚奈に『クローバーのしおり』を、俺は、海の砂と小さな貝を小瓶にいれた『砂瓶』を作った。

「凄い!2人とも頑張ったねぇ。翔はもっと簡単な物を作ると思ってたけど、結構本格的な物を作ってくれて(笑)」
「まぁ、俺が本気を出せばこれくらい朝飯前だよ!!」
「香介はモノを作るのが好きとは聞いてたけど、こんなにも綺麗な砂瓶、本当に貰って良いの?」
「当たり前だろう。柚奈の為に作ったんだから」

柚奈は俺達のプレゼントを大事にバッグの中にしまい、「次は私の番」と言い、手作りクッキーをお返しにくれた。
「あまり日持ちしないから、早めに食べてね」
「柚奈は料理上手いからなぁ。サンキュウ!」
「本当、きっと良いお嫁さんになるよ」
柚奈の顔が少し赤くなった。

「2人に逢えて、本当に良かった。また3人で会おうね」
「ああ、それまで元気でいろよ!」
「うん」
「柚奈・・・。頑張れよ。でも、あまり無理するなよ」
「うん・・・。香介、翔、ありがとう・・・。じゃあ、またね。また3人で会おうね。約束だよ!」
「そんなの分かってるよ(笑)」

「じゃあ、もう行くね」
そう言い、柚奈は少し足早にときわ山を下りて行った。
どんどん遠くなる柚奈の姿を見て、俺は焦っていた。
何も言えないまま終わってしまう・・・。

俺は柚奈を追いかけた。

「柚奈!!」
柚奈は驚いて振り向いた。
「香介?」
伝えないと、俺は、俺は・・・
「俺は、柚奈と、翔と一緒にいれて本当に幸せだった。どんな時でも柚奈は俺の側にいてくれた。そして、最後まで柚奈は約束通り笑っていてくれた」

俺の眼から急に涙がこぼれ落ちた。
抑えきれない感情が溢れ出て来る。

「どうしたの、香介?まだ最後じゃ・・・」
「違うんだ。俺は、俺は・・・」

覚悟は出来ていた。
ちゃんと伝えないと・・・。
もう、俺は・・・。
「俺はもうこの世の者じゃない。感覚や記憶があっても、俺はすでにこの世には居ない存在」
「・・・でも、いつから?」
「柚奈は、あまり知らないかなぁ。俺、小学生の時に交通事故に遭ってるんだ。その時から。黙っててごめん」

柚奈とは中学から一緒で、俺が事故に遭っていた事は俺も翔も教えてはいなかった。

翔が追いついた時には俺の姿は少しずつ消え始めていた。

「嫌だ!嫌だよ!まだ3人で会おうって約束したばかりじゃない!なのに、そんなの・・・」
柚奈も涙を流し始めた。

「だから、俺はあの時、何も言えなかった」

だんだん消えていく俺の姿に柚奈は泣く事しか出来なかった。

「香介、お前が今日まで生きていてくれて良かった。だからもう、安心して眠れ」
「あぁ、今まで迷惑かけたな翔。柚奈を頼む」
「ああ」

俺は柚奈の元へと行き、柚奈を抱きしめた。
「嫌だよ、香介。まだ言いたい事がたくさんあるのに・・・。お願い、行かないで」
「ごめん、柚奈。俺もまだ、ここにいたい。でも、もう時間だから」

俺の姿はほとんど消えていた。
最後にずっと伝えたかった事を残りの時間で伝えよう。
俺の本当の気持ちを・・・

「柚奈、最後に1つだけ言わないといけない事がある」
柚奈の肩に手を置き、俺は柚奈の目をまっすぐに見つめた。
「・・・何?」
「昨日、俺が陽灯神社で願い事をしただろ。その事だ。・・・柚奈、俺はお前の事が好きだ。いつも笑顔でいるお前が・・・。だから願ったんだ『また笑顔で会おうな』」

そして俺の姿は完全に消えた。
柚奈の手には俺に渡すはずだったクッキーを残して。
心残りはあるが、やるべき事はやった。

「香介、ズルイよ。私、まだ何も言ってないのに・・・」
翔が柚奈の元へと行き、優しく抱きしめた。




5年後の春、20歳になった柚奈と翔は一緒に暮らしていた。
そして・・・

「お母さん、おめでとうございます。元気な男の子ですよ」
柚奈に待望の第1子が誕生した。
「良く頑張ったな、柚奈」

私達の止まった時間がまた動き始めた。
「また逢えたね。『香介』」





長くなりましたが・・・、何とかリメイク完了しました!
これを基盤に4月小説を作ります。(あと少しで完成します)
お楽しみに♪
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プロフィール

結羽

Author:結羽
結羽=マイペースな自由人

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