朱き桜 第4話 月葉と簪

【麗、月葉、朱桜
蒼の記録書後の話】



朱桜との夜稽古を終え、私は湯浴みを済ませ、月葉の部屋を訪れた。

「月葉、少し良い?」

私は知らない月葉の過去。
それが、蒼の記録書に書いてあった。
月葉が御母様の守人に就いた時のことは記録されてあったが、それ以前のことは、あまり書かれては無く、聞いたことも無い。

「はい。どうぞ」


戸を開けた私は、目を疑った。
「えっ、と・・・」

そこには、男装姿をし、髪を上で一本に束ねた月葉が居た。

「この姿では初めてでしたね。すいません、驚かせてしまって」
スッと立ち上がり、月葉が私の前に来た。

何でだろう、月葉だと分かっているのに、ドキドキする。


「麗様、どうされたのですか?」
「あっ、その・・・。月葉の、昔の話を聞いてみたくて・・・」

今更だけど、こんなこと聞いたら失礼かも・・・。
もし、話したくないことだったら・・・。

「では、中へどうぞ。今、茶を煎れますね」


私は部屋に入ってからも、まだ緊張していた。
「温かいうちにどうぞ」
「ありがとう」

でも、茶を飲んだら、だいぶ心が落ち着いた。


「本題に入りますね。私は昔、日向様の守人に就く前は、花街に居ました。と言っても、芸者ではなく、芸者達を護る仕事をしていました」

「芸者を護る?守人ではなく?」

「契約を交わした者と、その周囲の者を護る。それが守人です。花街では、問題や騒動を回避し、芸者や御客様が円満で居られる場を作り、維持する役割をしていました。契約があるか、護るモノの対象が人の命や人生か、人々の生活空間か、などの違いですかね」

「何か、難しいね」


昔の話に花を咲かせている中、ずっと気になっていたことを聞いてみた。

「その服装も、花街の時に?」
「はい。この姿で・・・」

急に月葉が身を寄せ、帯に挿していた一本の簪で、私の髪を結い始めた。

「えっ、月葉。ちょっと!?」

驚きの余り、後退りする私の体に、月葉は軽く手を添え支えた。
まるで抱き締めるかのような密着度に、私は再度緊張した。

「うん。とても綺麗です、姫様」

結い終わり、髪をサラリと撫で下ろす月葉は、とても紳士的に見えた。

「なっ、なんか、すごく恥ずかしい・・・」


その後も、話は尽きること無く続き、私はいつの間にか月葉の部屋で眠ってしまった。


「このまま寝かせてあげてね、朱桜」
「ああ。今から出掛けるのか?」
「少し花街の太夫に会いに行くだけ。それにしても、ずっと部屋の前に居るとは思わなかったわ」
「麗が部屋に居なかったから、探させてもらった」
「朱桜も、今日は中で休みなさい。麗様の為にも」


私の知らない月葉の過去と、初めて見た、もう一つの月葉。
それは、とても複雑で、
でも、優美で、紳士的で、
少し不思議な感覚だった。
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